お客様をがんからお守りする運動
国の指針に従い検診を
2016.04.14
がんを交通事故にたとえると、がん検診はさしずめシートベルトにあたるでしょう。死亡を減らす効果があるからです。
交通事故を避けたければ、まず安全運転を心がけることです。しかし、どんなに安全運転を心がけても、相手が無謀な運転をすれば運悪く事故に巻き込まれることもあります。そのときに命を救ってくれるのがシートベルトや、その機能を補助してくれるエアバッグです。
シートベルト着用の有無によって、交通事故による致死率は14倍もの差が生じます。最も死亡リスクが高い運転席に限ると、その差は56倍にもなります。もちろん、安全運転に徹するベテランドライバーがシートベルトを着用しても、交通事故死を完全に避けることはできません。それでも、安全運転とシートベルトのセットが大事といえます。
同様に、がんで死なないために最も重要なのが生活習慣に気を配るとともに、がん検診を受けることです。禁煙、節酒、運動、バランスのとれた食事、体形の維持といったよい生活習慣を心がけて、定期的ながん検診を受けることが大切です。がんによる死亡をゼロにはできませんが、リスクは大幅に減ります。
残念ながら、がん検診の受診率とシートベルト装着率には共通点があります。それは欧米より数値が低いことです。2015年に警察庁と日本自動車連盟(JAF)がまとめた一般道のシートベルト装着率は、運転席と助手席は9割を超えましたが、後部座席は4割に達しませんでした。
注意すべき点も共通しています。自己流の対策はかえってマイナスになることです。ハンドルと自分との間に座布団を何枚も置くのは、交通事故の危険性を高めるだけでしょう。自動運転も現時点では、事故を減らす科学的根拠を持つわけではありません。
がん検診では、まずは国が定める指針に従うことが大切です。肺がんと大腸がんは40歳から毎年受けられます。子宮頸(けい)がんは20歳から、乳がんは40歳からそれぞれ2年に1度、決まった方法で受診してください。胃がんは40歳から毎年となっていましたが、50歳からの隔年に変わります。これらがシートベルトの役目を果たし、あなたをがん死亡から守ってくれるのです。
2016.4.7 日本経済新聞より