2019.07.12
私たちの体は37兆個もの細胞からできています。細胞の核には遺伝子を乗せた染色体が入っています。染色体に含まれるすべての遺伝子と遺伝情報のことをゲノムと呼びます。
がんは、ゲノムの突然変異によって、臓器の細胞が不死化することで発生します。最近になって、発がんのカギとなる特定の遺伝子異常は、臓器の枠を超えてさまざまながんの発症原因となることが分かってきました。
これまで、がんの治療は臓器ごとに別々に組み立てられてきました。しかし、臓器にとらわれず、おのおののがんの原因となる遺伝子変異を突き止め、それに有効な薬を選ぶ時代となりつつあります。
たとえば、同じ肺がんでも、AさんのがんとBさんのがんでは、原因となる遺伝子変異が別であることは珍しくありません。
反対に、Cさんの胃がんとDさんの大腸がんが同じ突然変異に原因を持つことも少なくないことが分かってきたのです。発がんの原因となるゲノム異常を見きわめて、それぞれに効果のある治療薬を使うオーダーメードの医療が「ゲノム医療」です。
先月から、個々のがんの遺伝子変異を次世代シークエンサーを使って網羅的にチェックする検査「遺伝子パネル」が保険適用されることになりました。医療費は56万円ですが、原則3割負担で、高額療養費制度も利用できます。
ただ、この検査を保険で受けられるのは、標準治療が存在しない希少がんや原発不明がんの他、標準治療を終えて選択肢がなくなった患者などに限られます。対象者は年約1万人と、がん患者全体の1%程度にすぎません。
また、治療の選択に役立つ遺伝子変異が見つかるのは検査を受けた約半数に限られます。遺伝子変異があっても、治療法がない場合もあり、薬の使用につながるのは遺伝子パネル検査を受けた患者全体の10%程度にすぎません。
余命が限られた進行・末期がんの患者にとっては、検査に時間がかかるのも大きな問題といえるでしょう。
まだまだ課題も多いゲノム医療ですが、がん医療の流れを変える画期的な一歩です。検査の迅速化、データの蓄積、創薬の進歩などが飛躍のカギだと思います。
2019.7.10 日本経済新聞より
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