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がん社会を診る 治療薬、広がる選択肢

2016.02.08

がんの標準的な治療法を否定するような書籍がベストセラーになったせいか、最近は「抗がん剤治療は受けたくない」と話す患者も少なくありません。確かに、臓器のがんである固形がんを薬物だけで完全に治すことは難しいですが、その進歩を否定することはできません。

従来型の抗がん剤は、がん細胞で起きているDNAの複製や細胞分裂を抑えます。このため、がん細胞だけでなく腸管、骨髄、毛根といった細胞分裂の盛んな臓器や組織にも影響が及び、下痢や吐き気、白血球の減少、脱毛などが起こりやすくなります。

2000年前後に登場した「分子標的薬」は、まったくタイプが異なります。DNAには直接作用せず、がん細胞だけに存在し、その増殖に関わる分子を標的にして攻撃します。従来の抗がん剤に比べると、副作用が少なく効果も高くなっています。

たとえば、グリベックという薬によって、慢性骨髄性白血病の10年生存率は8割を超えるようになりました。以前は2年生存率が50%程度と厳しい数字でした。ただ、まれですが、間質性肺炎など命に関わる副作用や高血圧や皮膚障害など、従来の抗がん剤では見られないような症状が、分子標的薬の使用によって出ることもあります。

最近は「免疫チェックポイント阻害剤」という新タイプの薬も開発され、注目を集めています。特に、小野薬品工業と米ブリストル・マイヤーズスクイブが共同開発した新薬のオプジーボは画期的な技術です。米科学誌サイエンスによる13年の科学の十大ニュースにも選ばれました。

がん細胞は免疫の働きにブレーキをかけて、その攻撃から逃れようとします。この仕組みを免疫チェックポイントと呼びます。オプジーボはこのブレーキを解除することで、免疫細胞が再びがん細胞を攻撃しやすくする仕組みです。皮膚がんの悪性黒色腫(メラノーマ)と一部の肺がんに対する有効性が科学的に証明され、国の保険が適用されています。

これに対し、保険適用がなく高額な費用がかかる一方で、効果がはっきりしない免疫療法も広く実施されており、要注意です。情報を見極める目を持つ必要があるでしょう。

2016.2.4 日本経済新聞より

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