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がん免疫を再活性化、CAR-T療法の効果アップへ

2018.09.26

体を守る免疫の仕組みを利用して、がんを攻撃する新しいタイプのがん治療「CAR―T療法」の効果を高める研究が相次いでいる。慶応義塾大学と第一三共は疲弊した免疫の働きを活発にする手法を見つけた。東京大学などはがんを倒す細胞の寿命を延ばし、増えやすくする技術を開発した。治療効果が持続してコスト低減につながる。肺がんや大腸がんなどの固形がんの再発予防などにも役立つ可能性がある。

CAR―T療法は、患者の免疫細胞を取り出して遺伝子を導入し、がん細胞への攻撃力を高めて体内に戻す。白血病などの血液がんでは、高い効果が確認されている。ただ、がん細胞がいったん減っても、1~2年以内に再び増えることが報告されている。投与した免疫細胞が疲弊するためと考えられている。

慶応大学の吉村昭彦教授と第一三共は体内で疲弊した免疫細胞の攻撃力を再び高める技術を開発した。がん細胞は免疫細胞の攻撃で大半が死滅しても、免疫細胞が疲弊すると再び増えてがんが再発する。CAR―T細胞の攻撃力を長期間維持する治療法が普及すれば、治療効果を大幅に高められる。

細胞の増殖を促す線維芽細胞を改良して、CAR―T療法に使う免疫細胞とともに培養する。人の白血病のがん細胞を入れたマウスにこの免疫細胞を入れると1カ月後でも全て生き残った。疲弊した免疫細胞は3週間で全滅していた。5年以内の臨床試験(治験)や臨床研究の開始を目指す。

カナダ・トロント大学の平野直人教授と東京大学の籠谷勇紀講師は、免疫細胞に遺伝子や遺伝子の一部を計3種類導入して、寿命を長くして増殖能力の高い細胞に改良した。がん由来のたんぱく質を認識して、細胞が活発に働く。

マウスの実験では、従来のCAR―T療法では12週間後までに8割以上が死ぬところが全て生き残るようになり、白血病細胞が消えた。今後は固形がんも治療できるように免疫細胞を改良して実用化を目指す。

CAR―T療法は高額な治療費が普及への課題となっている。米国では薬の投与1回で効果が出た治療で約5000万円かかる。新技術が実用化すれば、治療効果が持続しやすくなり、コスト低減につながる可能性がある。

治療対象が血液がんに限られるのも技術課題だ。固形がんでも長期間の治療効果がでれば、手術後の再発や転移を防ぐ治療などに役立つ可能性があるとみて、研究が盛んになっている。

▼CAR―T療法
がんを攻撃する「T細胞」と呼ぶ免疫細胞を患者本人から取り出し、遺伝子を加えて攻撃力を高めた「キメラ抗原受容体T細胞(CAR―T細胞)」にし、体内へ戻してがんをたたく治療法。従来の治療法では、数カ月しか生きられない白血病患者のうち、7~9割でがんが消え、1年以上延命して注目を集めた。外科手術や抗がん剤、放射線治療に続く新しいがん治療法とされる。白血病を中心に実用化の動きが進んでいる。
スイスの製薬大手ノバルティスが2017年に、米国で白血病の新薬「キムリア」で世界で初めて製造販売の承認を得た。ただ治療費が高額なことが難点と指摘されている。日本でもノバルティスの日本法人が4月、厚生労働省へ承認申請している。

2018.9.22 日本経済新聞より

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